溶接工とは、金属や樹脂などさまざまな材料を加熱・加工して接合する「溶接」の仕事を担う人を指します。溶接と聞いて、「分厚い鉄のマスクをつけて火花を散らしながら作業している姿」をイメージする方も多いのではないでしょうか。もちろんあの姿だけが溶接工ではありませんが、ポピュラーな溶接のイメージといえるかもしれません。ただし、溶接工にも種類があり、それぞれ作業内容も必要となる資格も異なります。
この記事では溶接工の仕事内容や向いている人、必要となる資格について代表的なものを紹介していきます。
【この記事の要約】
● 溶接の種類とは?
● 溶接の資格にはどんなものがあるの?
● 溶接工が求められる現場は?
● 溶接工のメリット4選
● 溶接工に向いている人は?
目次
溶接の種類とは?
溶接には大きく分けて、「融接」「圧接」「ろう接」の3つの種類があります。接合する材料の特性や目的などによって、最適な溶接法が使い分けられています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
融接
部材の接合部分や部材を接合するための溶加材を溶かして接合する溶接方法です。電気や火で熱を加えて溶かしたのち、冷却して固めることで強固に結び付くため、強度が必要な部材の加工に適しています。溶接において、最も広く用いられる基本的な接合方法であり、自動車や鉄道車両、飛行機、ロボットといった多くの金属加工に用いられています。
融接にはアーク溶接やガス溶接、レーザー溶接などさまざまな種類がありますが、代表的なのは空気中の放電現象を利用したアーク溶接です。中心部の温度は約1万6000℃にも達し、あらゆる金属の溶接に適しています。ロボットアームでの自動溶接にも多く使われています。
圧接
圧接とは、部材の接合部を電気や摩擦などで加熱し、圧力を加えて接合する溶接法です。融接のように接合部を液体状にはせず、プレス機などで機械的圧力を加えて固体のまま接合します。主な圧接には、ガス圧接、摩擦圧接、爆発圧接などがありますが、自動車やバイクのフレームなどに使われる電気抵抗を利用した抵抗スポット溶接が代表的です。機械的圧力による接合のため数値制御がしやすく、オートメーション化に適しています。
また、近年では摩擦圧接の一つである摩擦攪拌接合(FSW)も注目されています。接合部の加圧と同時にツールを回転摩擦させ、部材を混ぜ合わせて継手の効率を高める技術です。EV関連部品や半導体製造装置の冷却部の接合などに応用されています。
ろう接
部材そのものを溶かさずに、溶加材「ろう」を用いて部材を接合する方法です。部材よりも低い温度で溶ける溶加材で部材を接合させます。溶加材には「ろう」のほか、融解温度の低い「軟ろう(はんだ)」の2種類があり、使用する溶加材によって「ろう付け」「はんだ付け」と区別されます。融接や圧接と比べると強度は落ちますが、異なる母材でも接合できるのがメリットです。ろう接は、気密性、耐圧性、耐食性、耐熱性が問われる製品製造に適しており、パイプ・コネクタ・バルブ、自動車やバイクといった部品の接合に用いられます。中でも導電性があり融点の低いはんだ付けは、電子回路や精密電子部品などの接合に適しています。
溶接の資格にはどんなものがあるの?
溶接の資格は数や種類が非常に多く、溶接方法や溶接するものなどによって幅広く分かれています。溶接作業に必要な国家資格と民間資格の他にも、指導者や管理者向けの上級資格もあり、どの資格を取得すればいいか迷う方も多いでしょう。
ここでは初心者向けの資格から上級者資格まで、代表的な資格や取っておくべきおすすめの資格を厳選して紹介します。ただし、各種費用については2024年11月現在の情報となるので、資格取得の際は事前に確認しておきましょう。


アーク溶接作業者
アーク溶接作業者は、溶接工の入門資格として有名です。溶接工として仕事を始めるなら、最初に取得しておきたい資格です。
アーク溶接は感電や火災、爆発などの危険があるため、作業に従事するには「アーク溶接等の業務に係る特別教育」の受講が義務付けられています。受講資格は特になく、18歳以上なら誰でも受講可能です。2日で11時間の学科講習と1日で10時間の実技講習の計3日間の受講だけで簡単に取得できます。資格取得にかかる費用は1万~2万円程度。各都道府県の労働局長登録教習機関や指定事業所などで実施されています。
ガス溶接技能者
初心者向けの資格としてアーク溶接作業者と並ぶのが「ガス溶接技能者」です。溶接工の仕事を始める際には、前述のアーク溶接作業者かガス溶接技能者のいずれかの資格を取得するのが一般的とされています。ガス溶接はガスバーナーの炎を使って金属を溶かして溶接します。アーク溶接に比べて溶かすのに時間がかかるため、状態を確認しながら作業を進められることから、薄い部材の溶接に適しています。
ガス溶接技能者資格は、学科8時間、実技5時間の計13時間の講習を2日間で受講し、修了試験に合格すれば取得可能です。合格ラインは全体の6割以上かつ3科目それぞれが4割以上の正答ですが、難易度は高くなく、講習の内容を理解していれば十分クリアできるでしょう。資格取得にかかる費用は1万3000円~2万2000円程度。アーク溶接作業者と同じく18歳以上であれば誰でも取得できます。
溶接管理技術者
溶接管理技術者は日本溶接協会による民間資格です。溶接に関する知識や技術に加え、施工計画の策定から作業現場の管理まで行える溶接技能者の上位資格にあたります。
日本溶接協会が実施する試験に合格することで取得可能となっており、受験費用は筆記試験が約2万6000円、口述試験が約2万2000~2万7000円です。試験合格後、約2万円の登録料がかかります。溶接管理技術者になると作業現場の監督を任せられる立場になるため、キャリアアップにも役立ちます。また、民間資格ではあるものの、官公庁の工事を受注する際には当該資格保有者がいることが条件となりますので、建設業界からの需要も高いといえるでしょう。溶接工の仕事に慣れたら、目指してみてはいかがでしょうか。
ボイラー溶接士
ボイラーとは、燃料を燃やして水を温水にしたり水蒸気にしたりする装置です。ボイラーの製造や改造、修理などの溶接を行うのがボイラー溶接士ですが、ボイラーの溶接はミスをすると重大な事故を招く危険があります。そのため労働安全衛生法により従事者には資格が必要と定められています。
ボイラー溶接士の資格は「普通ボイラー溶接士」と「特別ボイラー溶接士」の2種類があり、普通ボイラー溶接士の受験資格には、ガス溶接・自動溶接を除く1年以上の溶接経験が必要です。なお、普通ボイラー溶接士の資格取得後、ボイラーなどの溶接経験が1年以上になれば特別ボイラー溶接士資格の受験資格が得られます。受験費用はいずれも学科試験が約7000円、実技試験は普通ボイラー溶接士が約1万9000円、特別ボイラー溶接士が約2万2000円です。資格取得には学科試験と実技試験の両方に合格する必要がありますが、条件に応じて学科試験が免除される制度があります。


ガス溶接作業主任者
ガス溶接作業主任者は、ガス全般に関する知識や法令知識を持ちながら、ガス溶接技能者の指導者として作業方法を決定したり現場を指揮したりするための国家資格です。
ガス溶接の経験が3年以上になると受験資格が得られ、学科試験に合格すると資格が取得できます。実技試験はありません。難易度は中級者向けで、合格ラインは全体の6割以上かつ学科科目ごとに4割以上の正答が必要。受験費用は約7,000円です。ガス溶接を行う現場には作業者に指示を出すガス溶接作業主任者が必ず必要であることから、就職や転職市場において非常に需要の高い資格といわれています。
溶接作業指導者
溶接作業指導者は溶接の作業員を指導するための資格で、日本溶接協会が認定する民間資格です。熟練の溶接技術を生かし、工場や建設現場で作業員に溶接方法を指導したり、作業記録を作成したりする役割を担います。さらに、溶接作業指導者の上位資格である溶接管理技術者と溶接作業員の橋渡し役を担うこともあります。
受験資格は25歳以上であること、そしてJISまたは公的機関の資格保有者かつ一定の実務経験があることの2つです。3日間の講習を受けた後、学科試験に合格すれば資格取得が可能になります。試験の合格率はなんと100%となっており、講習の内容を理解できればほぼ全員が合格できるとされています。なお資格取得費用は講習受講費用も含めて約5万円です。管理職やマネジメント業務に興味のある方は、資格取得を目指してみるといいでしょう。
溶接工が求められる現場は?
溶接工の活躍が求められる現場は、主に以下の2つです。
● 一般機械の製造工場
● ビルや橋梁などの建設現場
それぞれ詳しく見ていきます。
一般機械の製造工場
自動車や船、重電機などの一般機械製造の工場では、各部品を溶接したのちにそれぞれの部品を組み立て、流れ作業で一つの製品を完成させるのが一般的です。例えば自動車製造の場合は、車のドアや屋根といった各パーツを溶接した後にそれらのパーツを組み立てて車の形にしていきます。溶接を行うのは各パーツや部品となるため、扱う部材のサイズはそれほど大きくないのが特徴です。
ビルや橋梁などの建設現場
ビルや橋梁、住宅などの建設現場でも溶接の技術は必須です。建設現場では巨大な建材を扱うことや足場の悪い場所、高所での作業が多くなることから、高度な溶接スキルが必要になります。具体的にはH型鋼や角パイプ、鋼板や鉄筋などの溶接が行われます。また、建設現場では融接とろう接がメインとなり、工場で使用されるようなプレス機による圧接はほとんど行われません。
溶接工のメリット4選
溶接工として働くことには主に以下のメリットがあります。
● 未経験でも挑戦できる
● 手に職をつけられる
● 需要が高く将来性がある
● 安定した収入が得られる
一つずつ見ていきましょう。
未経験でも挑戦できる
溶接工は技術職です。何よりも技術や実力、知識などが重視されるため、学歴や年齢が就職のネックになることはほとんどありません。またその技術も実際には働きながら身に付けていくものであるため、未経験でも十分にチャレンジできます。昨今、製造業は人手不足が進んでおり溶接工の育成に力を入れている企業も多くあります。これから手に職をつけようと考えている方にもおすすめです。


手に職をつけられる
溶接の技術は短期間で身に付くものではありません。最低でも1年、さらに溶接工として一人前になるのであれば3年はかかるといわれています。このように溶接工として十分な技術を身に付けるには時間を要するため、すでに技術を持った溶接工は多くの企業から重宝されます。経験を積み一人前の技術を身に付ければ、年齢を重ねても仕事に困ることはないでしょう。また溶接工の資格で説明したように、保有資格を増やしていけば現場指導者や監督といった役職にキャリアアップしていくことも可能になります。
需要が高く将来性がある
近年はオートメーション化が進み、自動溶接やロボット溶接などを導入する企業も増えています。しかし、将来的にどれだけ機械化が進んだとしても、特殊な材料の加工や美しい仕上げなど熟練の技が必要とされる作業は必ず残るでしょう。ものづくりという日本の基幹産業を中心となって支えてきた溶接工の技術は、これからも活躍が期待できます。
安定した収入が得られる
溶接工は専門性が高い技術職であることから、製造業の現場作業員の中でも給与などの待遇が良いことで知られています。溶接はものづくりに欠かせない重要な工程です。景気や流行に左右されず、安定した収入が得られます。さらに溶接工として経験を積み、技術を高めていけば上級職へキャリアアップしていけるほか、独立開業するという道も開けるでしょう。独立すれば年収1000万円以上の高収入も夢ではありません。
溶接工に向いている人は?
溶接工の仕事には特性があり、向き不向きが分かれやすい職種です。以下のような特性にマッチする方は溶接工が向いているといえるでしょう。
● 注意力・集中力がある
● 体力に自信がある
● モノづくりが好き
一つずつ見ていきます。
注意力・集中力がある
溶接は電気やガス、プレス機などを使用し、火花が出る中で作業するなど常に危険が隣り合わせです。安全かつ正確に作業を進めるためには、高い集中力や注意力が欠かせません。また怪我だけでなく、製品の品質を確保するためにも集中力は必須です。製品によっては数ミリ単位の溶接作業もあり、些細なミスが欠陥品の原因になることもあります。集中力を切らさずに長時間同じ作業に従事できる方は、溶接工に向いています。
体力に自信がある
溶接の作業は長時間かがんだ姿勢や立ちっぱなし、無理な体勢を余儀なくされるケースも少なくありません。足場が不安定な場所や高所では踏ん張りをきかせないと危険なこともあり、全身の体力を消耗します。他にも溶接の高温熱を浴びながら金属板を切断したり、ハンマーで叩いたりするなど、とにかく体力を使います。現役の溶接工でさえ、休日には筋トレをして体力や筋力の強化に勤しんでいる方もいるほど、溶接工にとって体力は不可欠なものです。体力に自信があり、なおかつ体を動かすことが苦にならないことは溶接工の必須条件になるでしょう。
モノづくりが好き
溶接は部品を加工し、世の中にモノを生み出していく仕事です。自分が手を加えた製品が多くの人の手に渡り、社会の役に立つことを想像したときにやりがいを感じる方はモノづくりに向いています。日本の基幹産業に携わることにやりがいを見いだせれば、熱意を持ってスキルアップができるでしょう。また、工作やDIYなど自分で何かを作り上げるのが好きな方にもおすすめです。溶接の技術は日々進化しています。「好きこそものの上手なれ」の言葉通り、好きであるからこそ新しい技術や方法にも積極的に挑戦し、学んでいくことができます。


溶接工の仕事に興味がある方は「ものっぷ」に登録してみませんか?
いかがでしたでしょうか。溶接の仕事は年齢関係なく未経験から挑戦できる上、働きながら手に職をつけキャリアアップしていけるおすすめの職種です。体力に自信のある方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
ものっぷには、溶接作業に携わる求人を含めた製造派遣の求人が豊富にあります(なお、応募状況により埋まってしまっている可能性もあります)。
製造支援会社である株式会社平山が運営する求人サイト「ものっぷ」だからこそできる独自のサポートで、あなたのキャリアを支えます。
溶接工を含む製造派遣の仕事に興味のある方は、ものっぷへの登録がおすすめです。

