工場では日常生活で見ることのない大型機械や設備がたくさん稼働していますが、安全性などの理由から資格がないと扱えないものや作業もあります。
この記事では製造工場で働く際に持っていると役立つ資格を難易度別に紹介し、さらに資格を持つメリットについても詳しく解説していきます。資格取得を考えている方はぜひ参考にしてください。
【この記事の要約】
● 資格の種類は3種類
● 国家資格と民間資格の違いは?
● 工場勤務に有利な資格8選(難易度高め)
● 工場勤務に有利な資格7選(難易度低め)
● 資格取得のメリットと活用方法
● 資格取得に向けた学習と支援制度
なお、記事の中で例として挙げるものは、それぞれ一部です。たくさんありますので代表的なものに絞っています。
目次
資格の種類は3種類
資格には、「国家資格」「民間資格」「公的資格」の3種類があります。具体的な資格の説明に入る前に、まずそれぞれの違いを押さえておきましょう。
国家資格
国家資格とは、法律に基づいて各分野における能力や知識が判定され、特定の業務に従事することを国が証明する資格です。社会的信用度が高く、転職やキャリアアップに役立ちます。その分難易度は高めです。
民間資格
民間資格とは、民間団体や企業、学校などが独自の審査基準を設けて認定する資格です。国家資格ほどではないものの、業界標準として信用度の高い資格もあります。直接仕事に役立つものからニッチな資格まで実に多くの種類があるのが特徴です。
公的資格
公的資格は、かつて民間団体が実施機関となって省庁や大臣などが認定していた資格ですが、2005年に廃止されています。
国家資格と民間資格の違いは?
国家資格は国の法律に基づいて能力、知識が判定されるのに対し、民間資格は民間団体独自の審査基準で判断されます。能力の証明に法的な効力があるかどうかの違いがありますが、前述の通り民間資格でも知名度の高い資格もあります。「国家資格だから取得する」のではなく、民間資格も含めて自分にとって必要な資格を取得することが大切です。
国家資格の3分類
国家資格は法律により「業務独占資格」「名称独占資格」「設置義務資格」の3つに分類されます。それぞれについて説明します。
業務独占資格
業務独占資格とは、資格を持つ人しか業務を行えない国家資格です。資格がない人が業務を行うことは法律で禁止されています。専門性や危険性が高い業務、人命に関わる業務などが該当し、医師や弁護士、薬剤師などが代表的です。社会的信頼度が厚い分取得の難易度も高くなります。なお、業務独占資格は後に説明する名称独占資格も兼ねている他、設置義務資格の性質を併せ持つものもあります。
名称独占資格
名称独占資格とは、資格を持つ人しかその肩書きを名乗ることができない資格です。保育士や社会福祉士、介護福祉士などがあります。ただし、独占しているのは名称のみですので、例えば、保育士の資格がなくても託児所で子どもを預かることはできるといった具合です。
設置義務資格
設置義務資格とは、特定の事業を行う際に、有資格者を設置することが法律で義務付けられている資格です。主に危険を伴う業務や的確に処理する必要がある業務に定められています。事業の種類や従業員数などによって必要な設置人数は異なりますが、設置できなければ企業は事業を行えないため有資格者は有利でしょう。宅地建物取引士や衛生管理者などがあります。


工場勤務に有利な資格8選(難易度高め)
ここからは具体的に工場勤務をする上で持っていると有利になりやすい資格を紹介します。
以下の8資格は比較的難易度は高めではありますが、高度な能力を証明できる国家資格です。
● 衛生管理者(国家)
● 電気工事士(国家)
● 危険物取扱者(国家)
● 機械保全技能士(国家)
● エネルギー管理士(国家)
● 自動車整備士(国家)
● クレーン運転士(国家)
● 機械加工技能士(国家)
一つずつ見ていきましょう。
衛生管理者(国家)
衛生管理者は労働安全衛生法に基づく国家資格で、事業所の衛生管理や従業員の衛生指導などを行えます。業種を問わず常時50人以上の従業員がいる事業所には必ず1名以上の衛生管理者を設置する必要があるため、需要は高いといえるでしょう。衛生管理者の免許には第一種と第二種があり、第一種は有害業務を含む業種、第二種は有害業務が少ない業種でのみ働くことができます。
電気工事士(国家)
電気工事士は、住宅、ビル、工場などあらゆる建物の電気工事を行える国家資格です。電気工事は危険を伴うため、電気工事士の資格がないと結線などの簡単な作業も行えません。特に製造業では工場で多くの電気設備を使用するため、高い需要が期待できるでしょう。また、電気工事士には第一種と第二種があり、第一種はビルや工場など大規模施設の工事、第二種は住宅や店舗など小規模施設の工事が可能です。
危険物取扱者(国家)
危険物取扱者は、消防法で定められたガソリンや灯油、薬品など火災や爆発の危険性が高い危険物を取り扱う作業に従事する際に必要な資格です。ガソリンスタンドや化学工場、医薬品や食品を扱う企業など一定量以上の危険物を取り扱う施設では危険物取扱者の設置が義務付けられています。資格区分は取り扱える危険物の種類によって甲種、乙種、丙種に分かれ、さらに乙種は第1類から第6類に細分化されます。中でも乙種第4類はガソリン、灯油、軽油、重油という危険物全体の約8割を網羅する危険物を扱えるためおすすめの資格です。
機械保全技能士(国家)
機械保全技能士は、工場など製造現場の機械の修理やメンテナンス、保全業務を行える国家資格です。電気工事士と違い、機械保全技能士は電気に限定されない設備全体のメンテナンスや検査が可能です。資格は上から「特級」「1級」「2級」「3級」があり、上位ほど難易度が高くなります。まずは比較的難易度の低い3級からスタートし、実務経験を積みながら上位の資格を目指していくのがおすすめの方法といえるでしょう。
エネルギー管理士(国家)
エネルギー管理士は、電力や熱などのエネルギーを使用する施設で省エネの推進を行うための国家資格です。2006年に改正された「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(通称:省エネ法)」に基づき誕生しました。また、省エネ法によって指定された工場や施設ではエネルギー管理者やエネルギー管理員の選任が義務付けられていますが、双方とも国家資格であるエネルギー管理士にしかなれない職種です。
自動車整備士(国家)
自動車整備士とは、自動車の構造や整備に関する知識や技能を持ち、点検や整備、修理などを行える資格です。なお、資格がなくても整備に関する一部の業務に携わることはできますが、その場合は整備士ではなく「整備工」や「工員」という名称が使われます。なお、受験資格を得るには所定の学校を修了するか実務経験を積む必要があります。


クレーン運転士(国家)
クレーン運転士は、工事現場などで重い資材を持ち上げるクレーンやデリックを運転するための資格です。運転できるクレーン・デリックの種類によって「限定なし」「クレーン限定」「床上運転式クレーン限定」の3つの資格区分に分かれます。またトラックやキャタピラーなどの無限気動車に取り付けられているクレーンを運転する際に必要な「移動式クレーン運転士免許」も労働安全衛生法に定められた国家資格です。
機械加工技能士(国家)
機械加工技能士とは、旋盤、フライス盤、マシニングセンターといった機械を使って金属を加工する技能を証明する国家資格です。金属加工は金属製品の製造において必須の作業であり、製造工場などでは欠かせない存在になっています。機械加工技能士の資格は工業機械などの作業の種類によって「特級」「1級」「2級」「3級」の4つに分かれています。なお、受験するには一定の実務経験が必要です。
工場勤務に有利な資格7選(難易度低め)
続いて、工場勤務におすすめする資格のうち、比較的資格取得の難易度が低い資格を7つ紹介します。
・アーク溶接資格(民間)
・フォークリフト運転技能者(国家)
・有機溶剤作業主任者(国家)
・特定化学物質等作業主任者(国家)
・ボイラー技士(国家)
・CAD 利用技術者(民間)
・品質管理検定(QC検定)(民間)
一つずつ見ていきましょう。
アーク溶接資格(民間)
アーク溶接とは、電気を放出させて発生した熱を用いて金属同士を溶かして接合する溶接方法です。いくつかある溶接方法のうちもっとも資格を取るのが容易かつ多くの現場で主流になっている溶接です。アーク溶接の資格があれば、自動車工場や修理工場、鉄工所や造船所など幅広い現場で活躍できます。試験はなく、3日間の講習を受けるだけで資格が取得できます。
フォークリフト運転技能者(国家)
フォークリフトを使って荷役作業をするには、フォークリフト運転免許が必要です。工場や倉庫などの構内であっても資格が必要になります。フォークリフトは最大積載荷重量が1t未満か以上かで資格の種類が変わり、1t未満であれば「フォークリフト特別教育」を修了することで資格取得が可能です。1t以上は「フォークリフト運転技能講習」の受講に加え、試験が行われますが、合格率は90%~95%と非常に高くなっています。
有機溶剤作業主任者(国家)
有機溶剤とは、物質を溶かすことができる有機化合物のことで、エチルベンゼン、四塩化炭素、クロロホルムなどがあります。従業員の身体に害が及ばないよう有機溶剤を使用する現場では有機溶剤作業主任者の有資格者が現場の監督をすることが義務付けられています。有機溶剤作業主任者は労働安全衛生法に基づく国家資格で、現場の作業方法の決定や指揮、点検などを行う責任者です。
特定化学物質等作業主任者(国家)
特定化学物質等作業主任者は労働安全衛生法に基づく国家資格で、健康被害を与える可能性が高い特定化学物質から従業員を守るために作業環境を整える責任者です。特定化学物質を取り扱う現場では、必ず特定化学物質等作業主任者を置くことが法律で義務付けられています。2日間の講習受講のみで取得できるため、未経験でも取得しやすい資格です。


ボイラー技士(国家)
ボイラー技士は、ボイラーの管理や点検、メンテナンスを行うための国家資格です。ボイラーは燃料を燃焼させてエネルギーを発生させるため、専門知識を持つ人が扱わないと危険です。資格の対象となるのは伝熱面積が3平方メートル以上のボイラーですが、たとえ規模の小さいボイラーであっても安全性の観点から有資格者が扱うのが望ましいとされています。なお、資格区分は扱うボイラーの伝熱面積によって「2級」「1級」「特級」に分かれています。
CAD 利用技術者(民間)
CADとは、コンピューターを使用して設計や製図をするシステムです。CADを扱うにあたって必ずしも資格は必要ではありませんが、資格があればCADに関する一定のスキルを備えていることを証明できます。主に建設や機械の設計で使用されるものですが、工場でも高い需要があるため、取得しておくと有利でしょう。
品質管理検定(QC検定)(民間)
品質管理検定は、品質管理(Quality Control)に関する知識や手法を評価する資格です。一般社団法人日本品質管理学会(JSQC)が認定する民間資格ですが、製造業における品質管理の求人ではQC検定を持っていると優遇される傾向があります。特に品質管理基準の厳しい食料品業界では重宝されるでしょう。品質管理の知識レベルによって4段階の級に分けて評価されます。
資格取得のメリットと活用方法
製造業において資格を取得することは収入が増えるなどの直接的なメリットがあります。主に以下の3つはメリットを実感しやすい点といえるでしょう。
● 就職・転職時の優位性
● 給与や待遇の向上
● 安全性や効率性の向上
それぞれ資格の活用方法とともに説明していきます。
就職・転職時の優位性
工場勤務は未経験から始められる仕事が多い一方で、資格が必要な業務もたくさんあります。もし就職や転職の段階で最初から資格を持っていたら、それだけで他の応募者より有利になるのは間違いありません。さらにその資格が難易度の高い資格なら、より採用される確率は高まります。資格がないと働けないわけではありませんが、資格を持っていると優位に就職、転職活動を進められるでしょう。
給与や待遇の向上
工場にもよりますが、資格を取得すると「資格手当」が支給される場合があります。金額は月5000円~10000円程度が相場ですが、仮に月10000円の資格手当が支給されたとすると年間12万円が収入に上乗せされる計算になります。取得する資格の数が多くなれば、さらに加算額は増えていくでしょう。また、資格取得により携われる業務が増えることになれば、基本給(時給)を上げることも可能です。工場勤務では、たとえアルバイトや派遣社員でも資格を持っていない正社員より稼げる可能性があります。
安全性や効率性の向上
資格を取得するには、講習を受けたり試験に合格するために学習したりしないといけません。つまり、資格を取るまでの過程でおのずと知識や技術が身に付くため、結果としてスキルアップが図れます。自身のスキルが上がれば日々の業務においても作業スピードが上がり、効率良く動けるようになるでしょう。また、工場勤務の仕事には危険と隣り合わせの業務も多くありますが、設備や危険物の正しい取り扱い方法やリスクなどの知識を得ることで作業の安全性も高められます。
資格取得に向けた学習と支援制度
最後に資格取得に向けた学習方法や各種支援制度について以下の3点を紹介します。
● 資格講習・試験情報の収集方法
● 企業や派遣会社の取得支援制度
● 自主学習に役立つ教材やツール
それぞれ説明します。


資格講習・試験情報の収集方法
取得したい資格が決まったら、その資格試験を主催している団体のサイトを確認しましょう。インターネットで資格名を入れると簡単に検索が可能です。主催団体のサイトには講習や試験に関連する情報が掲載されています。サイト上で収集すべき必須情報は、「受験資格」「試験日・申込期限」「出題範囲」「合格基準」などです。
最初に受験資格の有無を調べます。特に要しないものもあれば一定年数の実務経験が必要なものもあります。受験資格がないのに学習を始めてしまうとせっかくの努力が無駄になってしまうかもしれません。次に試験日と申込期限を確認します。頻繁に実施している資格、年に1回しか実施しない資格などさまざまです。試験日までどれくらい期間があるかわかれば逆算して学習を始められるでしょう。そして何を学習すればよいかは出題範囲を見て確認します。受験の目的は資格を取ることであって満点を取ることではないため、合格基準を確認しておけば効率的な学習ができます。
企業や派遣会社の取得支援制度
工場や派遣会社によっては、業務に役立つ資格の取得を支援する制度を用意している場合があります。資格を取得するには講習を受講したり試験を受けたりする必要があり、その都度費用がかかります。それらの資格取得にかかる費用の一部もしくは全額を工場や派遣会社が負担してくれる制度が資格取得支援制度といわれるものです。福利厚生の一環として用意されている場合が多く、資格取得後に手当などが支払われます。他にも派遣会社ではさまざまな職種の講座が実施されていたり、また派遣先の工場主体でもスキルアップの教育訓練が行われていたりします。受験資格に実務経験が必要な資格もあるため、働きながら学べるのは工場勤務の魅力といえるでしょう。
自主学習に役立つ教材やツール
独学で資格取得を目指す場合は資格選びが重要です。あまりに受験要件や難易度が高すぎる資格は多くの時間と労力が必要になるためモチベーションの維持が大変です。その点、例えば電気工事士は受験資格がなく、マークシート形式の筆記試験と出題される候補問題が事前に知らされる技能試験で取得できるため独学でも取得しやすいでしょう。自主学習では参考書で知識を習得しつつ過去問を繰り返し解くのが基本です。過去問を解くことで出題傾向がつかめ、効率良く学習を進められます。また近年はアプリやインターネットツールでも学習可能な資格が出てきています。
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