みなさんは、工場勤務の年収と聞いてどのくらいを想像されるでしょうか。
「福利厚生が充実している」「シンプルな仕事が多い」といわれることの多い工場勤務の仕事。今回は多くの方が気にされるであろう工場勤務のお給料について、雇用形態や世代・業種別などさまざまな観点から掘り下げて解説します。なお、例として挙げるものは、それぞれ一部です。たくさんあるので代表的なものにしぼりました。
【この記事の要約】
● 工場勤務の給料と年収
● 雇用形態による給料の違い
● 世代別の給料と年収
● 業種別に見る工場勤務の給料
● 役職や資格の有無で給料・年収は変わる?
● 工場勤務の福利厚生
● 工場勤務で収入を増やすには?
● 工場勤務で失敗しないための注意点
これらについて詳しく解説していきます。
目次
工場勤務の給料と年収
まずは工場勤務の給料と年収の平均から見ていきます。 工場勤務の業種は製造業になりますので、厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」および国税庁の「令和5年分 民間給与実態調査」の製造業の項目を参考に説明します。
平均給料
製造業の平均給料は30万6000円で、全16業種のうち上から10番目の給与水準でした。
参考:令和5年賃金構造基本統計調査の概況(p10)
平均年収
製造業の平均年収は、平均給料と手当を合わせた430万円に103万円の平均賞与が含まれた533万円となっています。
参考:民間給与実態統計調査(p20)
雇用形態による給料の違い
工場には、正社員、アルバイト・パート、派遣社員、期間工とさまざまな雇用形態があります。これらの雇用形態別に給料の違いを見ていきます。
正社員
製造業の正社員の給料は、32万4700円です。正社員以外の給料が20万5500円ですので、10万円以上の格差があります。任される仕事の範囲が広く、責任も大きくなるため、その分安定した高水準の給料になっています。また、年収になると正社員にはボーナスも加算されるためさらに格差は大きくなるでしょう。ただし、これはあくまで製造業に含まれる全職種の平均給料であり、営業や企画・開発など工場現場の作業員以外の給料も含まれているためご注意ください。
参考:令和5年賃金構造基本統計調査の概況(p13)
アルバイト・パート
アルバイトやパートは短時間労働者の項目を参考にします。製造業の短時間労働者の時給は1171円となっています。宿泊業、飲食サービス業の時給が1136円ですので、こちらと比べると高めに設定されているようです。なお、月収や年収は働く時間数や日数などによって変わります。アルバイトやパートといった雇用形態は扶養内勤務など自分の都合に合わせて勤務できるため、育児や介護、家事がある方でも働きやすいでしょう。
参考:令和5年賃金構造基本統計調査の概況(p17)
派遣社員
工場によっても異なりますが、派遣社員の給与形態は時給制のところが多く、時給1000~2000円の間の募集が多い印象です。例えば、時給1500円なら1日8時間勤務したとして日給1万2000円になります。月20日働けば基本給24万円になり、ここに時間外手当や深夜手当が加算されます。
期間工
期間工とは、期間限定で働く契約社員で自動車メーカーの工場などに多い雇用形態です。高収入な求人が多く、初年度から十分な給料がもらえることで知られています。また、入社祝い金や寮が用意されているところもあり、充実した福利厚生が受けられることでも知られています。
世代別の給料と年収
次に各世代別の給料と年収について見ていきます。 政府統計ポータルサイト「e-Stat」にて、各データの詳細が確認できますので参考に説明します。
政府統計の総合窓口 e-Stat:https://www.e-stat.go.jp/
参考:令和5年賃金構造基本統計調査 (第1表 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額 E製造業)
20代の場合
製造業における20代の給料は、20~24歳が20万7800円、25~29歳が23万9400円でした。ボーナスその他特別給与額を加えると、20~24歳の年収は299万1300円、25~29歳では360万6600円です。郵便局や農協などの複合サービス事業や宿泊業、飲食サービス業と比べると若干高いものの、ほぼ同水準といえるでしょう。
30代の場合
30代の給料は、30~34歳が26万9400円、35~39歳が30万5300円です。ボーナスその他特別給与額を加えた年収は、30~34歳が416万4200円、35~39歳が478万1400円になります。製造業の給与水準は30代から徐々に高くなり、30代後半では運輸業、郵便業、生活関連サービス業、娯楽業、医療、福祉業界に逆転する結果になっています。
40代の場合
40代の給料は、40~44歳が32万5500円、45~49歳が34万5400円です。年収はボーナスその他特別給与額を加えると、40~44歳で511万8500円、45~49歳で543万3700円となります。全16業種の中ではほぼ中間に位置する年収水準といえます。
50代の場合
50代の給料は、50~54歳が36万6200円、55~59歳が37万7500円となっています。ボーナスその他特別給与額を加えて年収換算すると、50~54歳が578万5200円、55~59歳が595万1200円で年収のピークを迎えます。製造業に正社員として勤務し続けた場合、最終的に年収600万円程度まで上がると考えていいでしょう。
業種別に見る工場勤務の給料
業種別に見た場合、工場勤務の給与水準は高いのか、低いのか。いずれでしょうか。ここでは国税庁の「令和5年分民間給与実態調査」を参考に、各業種別の年収を比較します。なお、同調査では、「学術研究、専門・技術サービス業」と「教育、学習支援業」そして「生活関連サービス業、娯楽業」と「サービス業」をそれぞれ1業種とカウントしています。ご注意ください。
年収比較
全14業種の平均年収は以下の通りです。
業種 | 年収 |
建設業 | 548万円 |
製造業 | 533万円 |
卸売業、小売業 | 387万円 |
宿泊業、飲食サービス業 | 264万円 |
金融業、保険業 | 652万円 |
不動産業、物品賃貸業 | 469万円 |
運輸業、郵便業 | 473万円 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 775万円 |
情報通信業 | 649万円 |
学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業 | 551万円 |
医療、福祉 | 404万円 |
複合サービス事業 | 535万円 |
サービス業 | 378万円 |
農林水産・鉱業 | 333万円 |
全体平均 | 460万円 |
※ 令和5年12月31日現在の源泉徴収義務者(民間の事業所に限る)に勤務している給与所得者(所得税の納税の有無を問わない)を対象
参考:民間給与実態統計調査(p20)
製造業の平均年収は、全体平均の460万円を上回る533万円となっています。統計には工場勤務以外の職種も含まれてはいるものの、全業種で見ると工場勤務の仕事は平均以上の収入を得られる仕事といえるのではないでしょうか。
工場勤務の給料が高くなる理由
では、なぜ工場勤務の仕事は給与水準が高くなるのでしょうか。その大きな理由として考えられるのが残業手当や深夜手当の存在です。残業手当は、1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えると時給の1.25倍が支給されます。また深夜22時~翌5時の深夜帯勤務は、深夜割増賃金として時給の1.25倍が支払われるほか、法定外労働として深夜帯に残業をすれば、さらに1.25倍が加算されます。つまり、通常時給の1.5倍が手当として支払われるケースもあることが、給与水準を引き上げる大きな要因の一つと考えられるでしょう。
役職や資格の有無で給料・年収は変わる?
意外かもしれませんが、工場勤務の仕事には多くの役職があります。また、資格があると重宝される作業も多く、自分の努力次第で収入をアップできるのは工場勤務の魅力です。役職と資格、それぞれ給料・年収の観点で見ていきましょう。
管理職についた場合の年収
工場勤務の仕事は学歴を問わず、未経験から始められる仕事がほとんどです。後述する資格を取得したり働きながら経験を積んだりすることで昇進していける可能性があります。工場長クラスになると年収1000万円も夢ではなく、目標を持って仕事に取り組めるでしょう。
資格を持っている工場勤務者の給料の傾向
フォークリフトや玉掛け、危険物取扱者など工場には資格があると活躍の場が広がる作業が多く、資格保有者には5000円〜1万円ほどの資格手当がつく場合もあります。資格を取得すると収入がアップするだけでなく、工場内での期待や評価が向上し、キャリアアップできる可能性も高まります。資格取得に際して講習費用や受験費用を負担してくれる工場もあるため、チェックしてみるといいでしょう。
工場勤務の福利厚生
工場勤務は福利厚生が充実している企業が多いことでも知られています。代表的なものを紹介します。
通勤手当
通勤費の支給は企業の任意ですが、工場勤務の仕事では福利厚生の一環として支給されているところが多いでしょう。電車やバスなどの通勤費はもちろん、車やバイクでのマイカー通勤が許可されている工場では通勤手当として所定の額が支払われるケースも少なくありません。
無料送迎
工場は広大な敷地面積を必要とすることから郊外に建てられることが多く、最寄り駅からの通勤が難しいケースもあります。 そのため、大規模な工場では最寄り駅や寮から無料の送迎バスが運行している場合があります。送迎バスがあれば早朝や深夜帯の勤務であっても困らない上に、空調の効いた車内でゆっくりすることも可能です。通勤時間のストレスを大きく減らせるのは工場勤務のメリットといえるでしょう。
住宅手当や社宅制度
先に述べた通り、工場は一般的に郊外に建てられることから、遠方からも働きに来られるように、住宅手当や寮などの社宅制度を用意しているところが多くあります。勤務先の工場にもよりますが、住宅手当の支給や寮に住むことで、家賃と光熱費と合わせても月に1~2万円ほどしかかからないようになれば、生活に関わる固定費の支出を大きく抑えられるでしょう。その分、浮いたお金を貯金に回せるなど、短期で働いてもしっかり稼げます。
資格支援
工場勤務の仕事は資格がなくても働けます。しかし、資格があるとより幅広い作業に従事できることから、従業員に資格取得を推奨している工場は少なくありません。資格支援制度を導入している工場では、業務上必要とされる資格の講習費用や受験費用の一部もしくは全部を会社が負担してくれるところもあります。
入社祝い金・定着金を支給する場合もある
工場勤務の仕事は、季節や社会情勢によって需要が変化することが多く、繁忙期には多くの人手が必要です。そのため、入社祝い金や一定期間勤続すると支給される定着金など魅力的な入社特典を用意して人材を確保する傾向があります。特に大手自動車メーカーの期間工に支給される入社祝い金は比較的高額になることで知られています。
社員食堂
工場の社員食堂や寮の食堂を利用すればおよそ200〜500円程度で栄養バランスのとれた食事を取ることができます。外食だと一食1000円前後はかかりますし、コンビニでも500円ではドリンクと軽食程度になってしまうでしょう。社員食堂が利用できる仕事は生活費の節約におすすめです。最近では、敷地内におしゃれなカフェを併設している工場もあり、従業員がリフレッシュできるようさまざまな工夫が施されています。
工場勤務で収入を増やすには?
工場勤務で収入を増やす方法について具体的に説明します。
残業や夜勤
工場勤務の仕事は残業や夜勤をすると、それぞれ1.25倍の手当がしっかりと支給されます。つまり、時給が1200円の工場であれば、残業や夜勤の時間分は時給1500円で働ける計算になります。日勤のみで1日8時間を月20日勤務すると、1200円×8時間×20日=19万2000円が月収ですが、ここに深夜手当が月50時間つくとプラス1万5000円です。さらに出勤日に1時間ずつ残業すれば月3万円が追加で稼げます。特に繁忙期の工場ではたくさんの残業が可能なため、夜勤と組み合わせることでしっかり稼げるでしょう。
資格取得や昇進
フォークリフトや玉掛けなどの資格を取得して資格手当をもらったり、工場内で昇進したりして収入アップを目指す方法もあります。特に講習費用や受験費用を会社が負担してくれる場合は、自己負担なしで収入を上げられる可能性もあるためおすすめです。また、工場勤務の昇進は、学歴よりも現場の経験や技能スキルが重視される傾向があります。自分の努力次第でキャリアアップを目指せるため、モチベーション高く業務に取り組めるでしょう。
大手メーカーへ転職する
大手メーカーを目指して転職し、収入を上げるのもいいかもしれません。企業規模の大きい企業や特定の分野で高い利益を上げている企業は、給与水準が高い傾向にあります。もし正社員のハードルが高ければ、初めは有期雇用の社員として入社し、経験を積んでから正社員登用を目指してみてはいかがでしょうか。「メーカー直接雇用の可能性あり」と記載された求人なら、正社員に転換できる可能性も上がるでしょう。
工場勤務で失敗しないための注意点
工場勤務の年収は他業種と比較しても高い水準にありますが、いくつか注意しておくべき点もあります。一つずつ説明します。
給料に対して、負荷が大きいケース
工場勤務の仕事は、エアコンの効いたオフィスでパソコンの前に座って仕事をするオフィスワークとは環境が異なります。空調設備が整っていないところも多く、夏は暑く、冬は寒いという環境で、肉体労働をするケースも少なくありません。取り扱う製品によっては重量のあるモノを持ち運び、騒音や粉じん、化学製品のにおいが充満する中で仕事をすることもあるでしょう。工場勤務を代表するライン作業は長時間立ちっぱなしです。こうした体力的な負担から、「収入とのバランスがよくない」と感じる方もいます。
労働環境や安全管理に注意
工場勤務は労働災害のリスクが高い仕事です。大規模な設備や機械が稼働している中での作業は、一歩間違えれば生命の危険を伴う可能性もゼロではありません。高所での作業や化学物質などによる健康被害も考えられます。もちろん従業員の安全管理には、業界を挙げて対策強化に取り組んでいるものの、リスクがあることは知っておきましょう。
ボーナスや手当の割合
工場勤務の平均年収が高くなる理由には、残業代や夜勤などの各種手当やボーナスが高いことが挙げられます。残業や夜勤は多く入れば入るほど稼げますが、それだけ生活が不規則になるため、体調を崩さないように自分の身体としっかり相談することが大切です。また、近年はDXといって工場内のデジタルトランスフォーメーションも進んでおり、業務効率化が成功すれば残業が減る可能性も考えられます。ボーナスも会社の業績に左右されるため、一概に安定しているとは言えないかもしれません。
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いかがでしたでしょうか。
工場勤務は、誰でもたくさん稼げる可能性のある仕事です。もちろん不規則な勤務形態や肉体労働など身体的負担もありますが、その分、無料バスでの送迎や寮完備など充実した福利厚生を受けられるケースも多いでしょう。
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